Azureディスクストレージの種類(2018年6月現在)

nmikuni

こんにちは。Azureサポートチームの三國です。

今回は2018年6月時点での、仮想マシンに用いることができるディスクの種類について解説を致します。

本情報の内容(添付文書、リンク先などを含む)は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。

目次


1. はじめに - ディスクストレージの種類

2. ディスクストレージを選ぶ時のポイント

3. Azureにおけるディスクと仮想マシンとのアクセス方法

4. 管理ディスクと非管理対象ディスクの違い

5. 管理ディスクのPremium SSD, Standard SSD, Standard HDDの違い

6. 非管理対象ディスクのGPv2とGPv1の違い

7. 非管理対象ディスクのPremium SSDとStandard HDDの違い

8. まとめ

1. はじめに - ディスクストレージの種類


2018年6月時点において、Azure仮想マシンが使用できるディスクの種類は以下のようになっております。

今回のご案内内容は赤枠となります。

2017年頃より管理ディスクが利用できるようになったのを皮切りに、Azureでは様々な選択肢でディスクを選べるようになりました。このブログでは、出来るだけわかりやすく、それぞれの違いについてご案内できるようにいたします。

なお、Standard SSDについては2018年6月時点では地域を限定したプレビューの状態です(参考URL: 1-1)。

また、先に推奨を書かせて頂きますと、迷ったら管理ディスクを使われることが機能面でおすすめです。その後コストや用途でPremiumかStandardを選択頂くのがよろしいかと存じます。コストを最重視される場合は非管理対象ディスクのStandard HDDをご検討ください。

-参考URL:

1-1 (Preview) Standard SSD Disks for Azure Virtual machine workloads

https://azure.microsoft.com/ja-jp/blog/preview-standard-ssd-disks-for-azure-virtual-machine-workloads/

2. ディスクストレージを選ぶ時のポイント


ディスクストレージを選ぶ際に考慮ポイントとして上がりますのが、以下のポイントかと存じます。

-パフォーマンス

-耐障害性

-課金体系

上記のポイントについて出来るだけ言及するように致します。これらがディスク選びの参考になれば幸いです。

3. Azureにおけるディスクと仮想マシンとのアクセス方法


それぞれの違いをご紹介する前に、共通となっている概念'VHD'、'ストレージアカウント'について解説いたします。ここをご理解頂きますと特に管理ディスク、非管理対象ディスクの違いがわかりやすくなるかと存じます。

Azure仮想マシンのディスクイメージはVirtual Hard Disk(VHD)というファイル形式を用いています(参考URL: 3-1)。

VHDファイルはストレージアカウントに保管されます。ストレージアカウントに保管されたファイルに対してはREST APIで操作(読み書きなど)を行うことができます(参考URL: 3-2)。

Azureではストレージアカウントに保管されたVHDファイルに仮想マシンがRESTで通信を行うことでディスクとして用いています。

以下のイメージ図がご参考になれば幸いです。

-参考URL:

3-1 VHDについて

https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/virtual-machines/windows/about-disks-and-vhds#about-vhds

3-2 Azure Storageの概要

https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/storage/common/storage-introduction

4. 管理ディスクと非管理対象ディスクの違い


管理ディスクが登場するまでは、VHDを配置するストレージアカウントをユーザが指定していました。

一方で管理ディスクではVHDが配置されるストレージアカウントはAzureが管理し、ユーザが意識することはございません(参考URL: 4-1)。

これにより、以下のような違いがあります。

-パフォーマンス

ストレージアカウントには、受け入れられるIOPSに上限があり、上限を超えるとスロットリングが起きます(参考URL: 4-2)。

しかし管理ディスクを利用することでストレージアカウントのIOPS上限などを意識する必要はなくなります。

-耐障害性

管理ディスクと可用性セットを組み合わせて使用することで、可用性セットの VM のディスクが、単一障害点にならないように相互に十分に分離されるため、可用性セットの信頼性が向上します。詳細は参考URLをご参照ください(参考URL: 4-3)。

-課金体系

課金体系については管理ディスク/非管理対象ディスクのなかでも差異がありますのでここでの説明は割愛します。

-その他

バックアップやスナップショット、イメージなど、管理ディスクには様々な機能がございます(参考URL: 4-1)。また、UIからの操作性に優れているのも大きなメリットです。いくつかサポートチームで書いたブログを紹介しますのでよろしければご参照ください(参考URL: 4-4~7)。

-管理ディスクと非管理対象ディスクの判別方法

ポータルの'すべてのサービス' > 'Virtual Machine' > [仮想マシン名] > 'ディスク'の画面を見ても、仮想マシンがどちらの種類を使っているのかは判別できませんが、OSディスク名をクリックしますと、違いが現れます。

管理ディスクの場合は、「スナップショットの取得」などの選択肢が表示されます。

非管理対象ディスクの場合は、VHDのURIが表示されます。

ポータルの表示も常に改善が進んでおりますが、執筆時点の情報としてご参考になれば幸いです。

-参考URL:

4-1 管理ディスクの概要

https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/virtual-machines/windows/managed-disks-overview

4-2 ストレージ アカウントのスケーラビリティ ターゲット

https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/storage/common/storage-scalability-targets#scalability-targets-for-a-storage-account

4-3 可用性セット内の VM に管理ディスクを使用する

https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/virtual-machines/windows/manage-availability#use-managed-disks-for-vms-in-an-availability-set

4-4 Azure仮想マシン(管理ディスク)の交換を活用して元のネットワークにリストアする

https://blogs.technet.microsoft.com/jpaztech/2018/05/30/restore-vm-by-swap-manageddisk/

4-5 リソース マネージャー (ARM) 環境で既存の VM を既存の可用性セットに追加する方法[管理ディスク編]

https://blogs.technet.microsoft.com/jpaztech/2017/12/11/addavasetvmarm-mng/

4-6 管理ディスクを用いたLinuxのOSディスクを他の仮想マシンのデータディスクとして接続する方法

https://blogs.technet.microsoft.com/jpaztech/2017/10/19/attach-mgmtosdisk-to-otherlinuxvm/

4-7 Azureで仮想マシン名を変更する

https://blogs.technet.microsoft.com/jpaztech/2017/10/04/change-azure-vm-name/

5. 管理ディスクのPremium SSD, Standard SSD, Standard HDDの違い


2018年6月、管理ディスクにStandard SSDという選択肢がプレビューとして追加されました。

参考URL: https://azure.microsoft.com/ja-jp/blog/preview-standard-ssd-disks-for-azure-virtual-machine-workloads/

詳細な違いについては上記のURLで取り上げられていますが、このブログでは先ほどより用いているそれぞれのポイントについて違いを言及します。

-パフォーマンス

Standard HDDとその他2つではハードウェア的にアーキテクチャに違いがあり、パフォーマンス観点では一般的に以下のような位置づけになります。

Standard HDD < Standard SSD < Premium SSD

特に500IOPSよりも高いIOPSが必要なシステムについては、Premium SSDの利用が必要です。一方で64GiB以下のサイズのPremium SSDについてはパフォーマンスがStandard HDDよりも悪くなる場合がありますのでご注意ください(参考URL: 5-1)

-耐障害性

仮想マシンのSLA バージョン1.8においては'すべてのオペレーティング システム ディスクおよびデータ ディスクについて Premium Storage を使用する単一インスタンス仮想マシン'に対してSLAが適用されます。もし可用性セットを組まず可用性ゾーンに配置されていない場合はPremium Storageを用いないとSLAの対象となりませんのでご注意ください。(参考URL: 5-2)

-課金体系

それぞれの種類に共通して、使用量に関わらずディスクサイズによって課金が発生します。また、サイズは切り上げ方式であり、たとえば200GiBのディスクサイズであれば256GiBのディスクとして扱われます(参考URL: 5-3)。

-その他

仮想マシンのシリーズによってはPremium SSDが利用できない仮想マシンもあります。仮想マシンのサイズ選択の際に'PREMIUM'の列に'HDD'と書かれていればHDDのみ、SSDと書かれていればHDDもSSDも利用できます。

-Premium SSD, Standard SSD, Standard HDDの判別方法

ポータルの'すべてのサービス' > 'Virtual Machine' > [仮想マシン名] > 'ディスク'の画面より確認頂けます。Standard SSDについては'StandardSSD_LRS'のように表示される予定です。

-参考URL:

5-1 ディスクのスケーラビリティターゲット - 管理対象の仮想マシンディスク

https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/virtual-machines/windows/disk-scalability-targets#managed-virtual-machine-disks

5-2 Virtual MachineのSLA

https://azure.microsoft.com/ja-jp/support/legal/sla/virtual-machines/v1_8/

5-3 Managed Diskの価格

https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/details/managed-disks/

6. 非管理対象ディスクのGPv2とGPv1の違い


非管理対象ディスクで使用できるストレージアカウントの種類には、汎用v2 (GPv2)と汎用v1(GPv1)があります。GPはGeneral Purposeを意味しています。

GPv2とGPv1の違いについて、同様の観点で記載いたします。

-パフォーマンス

ディスク用ストレージとして、パフォーマンスについては現時点においてGPv2とGPv1に差異はありません。

-耐障害性

ディスク用ストレージとして、耐障害性についても現時点においてGPv2とGPv1に差異はありません。

-課金体系

・Premiumディスクを使用する場合はGPv2とGPv1とで費用の差異はありません。

・Standardディスクを使用する場合は費用の差異がございます。

Standard Diskでは以下の3種類に対して課金があり、それぞれ以下のような差異があります(参考URL: 6-1)。

ディスク容量に対する課金: GPv2の方が安価

ディスク操作に対する課金: GPv1の方が安価

データ転送に対する課金(GRS/RA-GRSのみ): GPv1の方が安価

そのため、ディスクの使われ方によって安価な選択肢が異なります。コストの評価については参考URLをご活用ください(参考URL: 6-2)

-その他

GPv1からGPv2への移行は可能ですが、その逆はできませんのでご注意ください。

-参考URL

6-1 Azure ページ BLOB の価格

https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/details/storage/page-blobs/

6-2 Azure Storage アカウントの種類 - GPv2 ストレージ アカウント層の評価

https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/storage/common/storage-account-options#evaluating-gpv2-storage-account-tiers

7. 非管理対象ディスクのPremium SSDとStandard HDDの違い


-パフォーマンス

一般的にPremium SSDの方が高パフォーマンスです(参考URL: 7-1)

-耐障害性

管理ディスクの場合と同様に、仮想マシンのSLA バージョン1.8においては'すべてのオペレーティング システム ディスクおよびデータ ディスクについて Premium Storage を使用する単一インスタンス仮想マシン'に対してSLAが適用されます。もし可用性セットを組まず可用性ゾーンに配置されていない場合はPremium Storageを用いないとSLAの対象となりませんのでご注意ください。(参考URL: 7-2)

Standard HDDについては地理冗長(GRS/RA-GRS)がサポートされます。Azure BackUpやSite Recoveryを用いることができない場合は地理冗長オプションを用いて耐障害性の向上を検討されることもあるかと存じますが、地理冗長オプションを利用してリージョン間でレプリケーションをしてもデータの整合性は一般に十分ではありません。

整合性を保ってレプリケーションを実施したい場合は参考URLに記載があるように整合性スナップショットを計画・実施ください(参考URL: 7-3)。

-課金体系

大きく以下3つのポイントがございます。詳細については参考URLをご参照ください(参考URL: 7-4)。

1. 非管理対象ディスクのStandard HDDにおける容量の費用は、実際に利用されている領域分にのみ課金されます。Premium SSDについては管理ディスクと同様使用量にかかわらずディスクサイズによって課金が発生します。また、サイズは切り上げ方式であり、たとえば200GiBのディスクサイズであれば256GiBのディスクとして扱われます。

2. ディスクへのトランザクションについて、Standard HDDには課金が発生しますがPremium SSDには発生しません。

3. Standard HDDで地理冗長(GRS/RA-GRS)を使用する場合はリージョン間でのデータ転送に対して課金が発生します。

-参考URL

7-1. VM ディスクのスケーラビリティおよびパフォーマンスの目標 - 非管理対象の仮想マシン ディスク

https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/virtual-machines/windows/disk-scalability-targets#unmanaged-virtual-machine-disks

7-2 Virtual MachineのSLA

https://azure.microsoft.com/ja-jp/support/legal/sla/virtual-machines/v1_8/

7-3. Azure IaaS ディスクのバックアップとディザスター リカバリー - 整合性スナップショット

https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/virtual-machines/windows/backup-and-disaster-recovery-for-azure-iaas-disks#copy-the-snapshots-to-another-region

7-4. Azure ページ BLOB の価格

https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/details/storage/page-blobs/

8. まとめ


ここまで、それぞれのディスクについて特徴を記載しました。最後に改めて各観点でポイントをご紹介します。

-パフォーマンス

一般的にPremium SSDを用いることで高パフォーマンスを得ることができますが、管理ディスクについては64GiB以下のサイズにするとIOPSなどがStandard HDDよりも低くなりますのでご注意ください(参考URL 5-1)。ただし、ディスクアクセスのレイテンシーは一般的には Premium SSD の方が優れておりますので、どちらのディスク種別の方が良好な性能を発揮できるかは、アプリケーションからの I/O の性質に依存する部分もございます。

-耐障害性

可用性セットを組んだ仮想マシンは管理ディスクを使うことでさらに耐障害性が向上します(参考URL 4-3)。一方で可用性セットを組まない仮想マシンについてはPremium SSDを利用した場合のみSLAの対象となります。ただし可用性セットを組み冗長構成とした方がよりSLAが高く設定されています(参考URL 5-2, 7-2)

また、地理的な耐障害性を高めたい場合はAzure BackUpやSite Recoveryをご検討ください。GRS/RA-GRSでのレプリケーションではデータの整合性は一般に十分ではありません。整合性を保ってレプリケーションを実施したい場合は参考URLに記載があるように整合性スナップショットを計画・実施ください(参考URL: 7-3)。

-課金体系

ディスク容量について実際に利用されている領域分にのみ課金されるのは非管理対象ディスクのStandard HDDのみです。

トランザクションコストやデータ転送コストについてはそれぞれの種類によって違いがございますので、参考URLを利用し比較を頂ければと存じます(参考URL 5-3, 7-4)。

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以上、ディスクの種類についての解説となります。様々なニーズにお応えできるよう種類が多くありますが、一方で悩まれることもあるかと思います。Azureサポートチーム一同、気持ちよく使って頂けるよう努めておりますので、もし気になることなどありましたらコメント欄に記載ください!長文にお付き合いくださりありがとうございました。